LDCイノベーション講座 第5回

11月10日(金)開催 人工知能の切り開く時代の生き方とは

11月10日は、第5回LDCイノベーション連続講座「人工知能の切り開く時代の生き方とは」が開催されました。お話を伺ったのは、ITジャーナリストの湯川鶴章氏。急速にAIが進化していく今、人間はどのように生きていけばよいのかという話題に、関心が集まりました。

人工知能が得意な領域とは

今日はこの会場にも、いろんな仕事をされている方が集まっていると思いますが、総じて気になっているポイントは「AI時代の生き方」ではないかなと思います。よくAIの登場で仕事の多くが代替されると言ったりしますが、ではまず、AIの得意領域は何なのでしょう。

人工知能というのは、要するに予測モデルのことなんです。各種データ(インプット)と結果(アウトプット)さえあれば、AIを使って予測ができる。例えば「明日予報では気温32度だが、アイスはどれくらい売れそうか」という問いに対して、これまでの温度(データ)とアイスが売れた数(結果)があれば、予測が立ちますよね。これと同じことです。つまりみなさんの業界の中で、各種データ(インプット)と結果(アウトプット)がそろっているものは、将来的に全部AIで測れるようになります。

今は、画像の知覚のような人間の方が一見得意そうな領域でもAIが人間の精度を超えています。googleの画像検索にも使われていますが、例えばスターウォーズのチューバッカの画像を検索するときは、インプットとしてチューバッカの写真を記憶させておく。画像をすべてデジタル(0または1)で変換し、画像の並びパターンを記憶させておく。そうすると、他の写真についてもそれがチューバッカの写真である可能性が計算できる。大体同じ01希望の並び方をしていれば、チューバッカと認識されるわけです。

今年、アメリカの半導体メーカーNVIDIAの研究発表会にいってきましたが、相当研究は進んでいました。まず全体の6割を占めたくらいは医療関係の研究はAIのおかげでごろごろすごい発表が出てきている。人間の方が得意なのではないかとされる芸術方面でも、特定の芸術家の作品を読み込ませると、その芸術家の作風の絵を描いてくれる機械ができたり、ゲーム会社では、シミュレーションをコンピュータ内で行えるプラットフォームも作っている。人間だと100回のシミュレーションに数時間かかるようなことも、コンピュータ内であれば実施者をコピペで増やすこともできれば、シミュレーションにかかる時間の早送りもできるようになっています。監視カメラで撮った動画が有効活用される仕組みもできています。AIが画像内で人間を識別できるので、「何時頃、ここを通った人はいますか?」と動画に質問すると、ピンポイントで表示してくれたりする。これが、今AIを駆使してできる技術です。

 

人間の仕事は、本当にAIにとって替わられるのか

みなさんも最も関心が高いであろう、AIの進化によって人間の仕事がなくなるのかという話。これに対しては、現時点ではいろんな意見があるんです。2045年には全ての仕事をAIが取っていくという説もあれば、「クリエイティビティ/マネジメントといった領域は残るのではないか」という説もある。短期的にすべての仕事がなくなるわけではないが、中期的に残る仕事もいずれは消える(音楽作曲や接客業ロボットなどもAIにとって替わられる)という説もあります。あるいは、ほとんどの労働をAIやロボットが行うことで、人間が労働が解放され、賃金労働の消滅=資本主義の自然死が起こる可能性を指摘している人もいます。遠い未来には、日本にいるかぎり5-7万円もらえる「ベーシックインカム制度」ができるのではないか、という説です。サービスの価格が低下すれば、それでも十分生活できるというわけですね。
これだけを聞くと、人間が働かなくていい世界ということで幸せな未来を描く人もいるかもしれません。でも、仮にベーシックインカム制度が成立したとしても、それまでの期間は全ての労働者が参加する仕事の争奪、つまりバトルロワイアル状態がかなり熾烈になっていくのではないかと思います。

「仕事って本当になくなるの?」という問いについて、僕の個人的な意見、観点を言いたいと思います。
まずは「シンクタンクの予測は本当に当たるのか」ということ。シンクタンクの予測は、どれも特定の論文をベースにしているんです。なので、元の論文が覆されるようなことが起きた場合は、他の予測も崩れていく可能性もあるのではと思っています。
次にAI、ロボットで代替可能であるからと言って、人間が代替するとは限らないのでは?ということ。今だって、やろうと思えば全部自動化できる部分もあるわけですが、コストが下がるからと言って、経営者は全部ロボットにするとは限りませんよね。例えば旅館のような場所では、仮にAIやロボットに全て切り替えれば完璧に接客はしてくれるかもしれない。でも、心を込めて接客するとか、受け手がその真心に心打たれるとか、そういったことはない気がします。
クリエイティビティの領域では、すでにある作品の真似はAIでもできるかもしれないけれど、独創的な発想は人間でないと生み出せない領域もあるのでは?ということも言えますよね。最初にお伝えした通り、AIは元データのインプットがあって初めて成立するものなので、独創的なものを作る上では予測モデルが立てられないのではないかと思うんです。
あとは、AIはベンチャー企業の社長を担うことはできないと思います。起業するのに、失敗する可能性は8割5分といわれたら、AIは絶対にやらないわけです。確率、数式で動いているからです。でも人間は「なぜやるの?」「やりたいから!」という志だけで動くこともある。そういった、リスクをとってでも新しいことをやるというのは人間だからこそできることではないでしょうか。

というわけで結論、急に仕事がなくなることはないのでは?ということです。ということです。ただし、本当のところは僕にもわからないというのが正直なところです。

AI時代の生き方とは

これからの時代を生きていくにあたってのポイントは、こんなことかと思います。

・AIが入ってきそうにもない領域
・儲かる領域
・好きな仕事=得意な仕事
・明るく、楽しく、友達いっぱい

1つ目はこれまでお伝えしてきたようなこと。2つ目については、僕はいずれ儲からなくても生きていける時代はくると思っていますが、この資本主義の世の中でしばらくは稼ぐことも重視されるのではないかということ。仕事や産業をつくるというのがまだまだ儲かるのではないでしょうか。そして、3つ目。嫌なことを嫌々やっていても、好きでやっている人には勝てないと思うんです。逆に言えば、たとえ儲からなかったとしても、好きで得意なことなら継続していけるのではないかと。あとは、ロボットやAIは人付き合いができるわけではない。1人こもってコツコツやるのはAIの得意領域なので、人同士つながってシナジーを起こしていくことも大事なことではないかと思います。例えば財務、営業、技術の力など、自分の得意領域をもっていれば、新たな人間関係を持ったときに「ちょっと一緒にやらない?」という風に生きていけるのではないでしょうか。

近未来の働き方は、例えばこんな風に変化するのではないかと思います。

・プロジェクトごとにAIがチームを集め、終われば解散する
・AIくそくらえ、俺は好きに生きる という人が増える
・リモートワークが盛んになる
・1つの場所に集まることの重要性が再認識されるようになる
・都会と田舎の2拠点、3拠点生活をする人が増える

私は世の中が一枚岩でできているとは思っていないので、AIの登場で世の中がどう変わっていくのか、本当のところはわかっていません。ただ、テクノロジーはどんどん我々の機能を代替してきてくれた中で、AIはわれわれの「論理的思考」を代替します。確実にAIの方が優れている領域はある。だからそこで競ったところで仕方がないと思います。昔は記憶力がいい人を「頭いい」と言いましたが、今はそう言わないように、テクノロジーによって能力に長けている人の像も変わってきているんです。今は合理的に物事を判断できる人がすごい、と言われることが多いかもしれませんが、今後は「自分の本質に基づいて生きている人」が活躍できるのではないか、というのが私の意見です。学歴も業績も関係なく、自身の生きたい方向とやっていることの方向があっている人、一見好き勝手に生きているような人です。これからAI時代を生きていくわけですから、自分の本質について見つめ直すのもよいかもしれません。


文:武藤あずさ
撮影:梅田眞司

 

講師紹介

■湯川 鶴章

ITジャーナリスト

TheWave湯川塾・塾長。大阪の高校を卒業後、渡米。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2005年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立、ブログメディアTechWaveを創業。2013年から、編集長を降り、新しい領域に挑戦中。「2歩先の未来を読む」をテーマにした少人数制勉強会TheWave湯川塾を主宰している(http://thewave.teamblog.jp/)。代表的な著書に「人工知能、ロボット、人の心。」(2015年)、「次世代マーケティングプラットフォーム」(2007年)、「ネットは新聞を殺すのか」(2003年)などがある。

 

LDCイノベーション連続講座 今後の予定

2018年1月25日(木)
最先端の「医学・工学研究者」の視点
《講師》
Pepper感情認識エンジン開発者/
東京大学大学院医学系研究科特任講師 工学博士 光吉 俊二 氏

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