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コラム

Meet Up OD×Tech~デジタル化は職場を活性化するか~報告レポート  登壇者 丸島 美奈子

簡単に自己紹介いたします。シニアアクションラーニングコーチを2004年か2005年に取得し、当時はキャリアコンサルタントと人材開発のご支援をしておりました。ある時期から、システム寄りの方にキャリアが変わって、現在は人事、人材に関わるシステムの営業をサポートする仕事をしております。
本日は、HRテックとは何かということと、HRテックの変遷、また実際に弊社オラクルでどんな風にHRテックを使って人材開発をやっているか、という三本柱でお話をしたいと思います。

HRテックとその変遷

HRテックとは、HR(人的資源)に適用するテクノロジー全般のことを示します。
世界で最大級のHRテックイベントがあり、去年一昨年ぐらいから、日本の方も行かれるようになりました。
HRテクノロジー変遷はITのテクノロジーの上に成り立つのですが、現在に至るまで、4世代の変遷があります。
第一世代はオフコン時代、第二世代がパーソナルコンピューターの時代、第三世代がインターネットの時代、そして第3.5世代は2000年くらいから、クラウドの時代なります。
そして第四世代が、2020年でAIの時代という風に、一般的なITが進化をしてきているわけです。
そうした中で人に関わるものはどんな風に変わってきたのかと言いますと、古くはみなさん全員お使いになっている給料システムがあります。
そしてERPという統合システム。人材、給与、勤怠、人事組織のシステムもまとめたものといえます。
そしてインターネットの時代になって、働き方改革と連動した形での仕事の仕方の変更、ペーパーレスも流行ってきました。
そして2000年代の始めから、タレントマネジメントという言葉ができて、人材をシステムで管理していこうという流れになっています。
給与の管理ではなく、人そのものを管理していくということです。
例えば、丸島という人はどういうキャリアを持っていて、どういう仕事をしてきて、どんなことに興味を持って、そして何をしていきたいのか、仕事の出来はどうなのか、そのようなことを管理して、会社の業績を上げていこうというのが、タレントマネジメントです。
グローバルな潮流としては2000年代からですが、日本では言うと10年から15年ぐらい遅れている感じです。
私は、タレントマネジメントのビジネス始めたのが、アクションラーニングを勉強してそのあとすぐ、2005~6年ぐらいからです。
その頃は、「タレントマネジメント」というと人事の方でも、「うち別にタレント事務所じゃないんで」とか、「お笑いかなにかですか?」とか、タレントという言葉にそのような反応をされていました。
今はタレントといったら、「人材のことですね。特に優秀な人材をどうやって活用していくかということですよね」と理解していただけるようになりました。
でも、まずそこにたどり着くのに時間がかかったというのが2000年代です。
そして第四世代、モバイルになり、ピープルマネジメントという言い方もするようになりました。

HRテックは効率化から課題解決型へ

そして第五世代、いろんなポイントソリューションが非常に多く出てきて、ベンチャーがたくさんあります。
新しくできた会社なので、当然新しいテクノロジーを使って、新しいニーズを解決していくということで、今HRテックが花盛りなのです。
アメリカもそうですけど、いわゆるベンチャー、スタートアップに対する投資も非常に多く、いろんな会社がどんどん新しく生まれているというのが現在の状況です。
ここ三年ぐらいでどんどん増えていますね。
日本でも、求人関係、人材関係が凄く多いです。
昔はリクナビとかマイナビしかなかったところに、メディアも数多くできましたし、才能を開発するためのツールもたくさんあります。

そして労務に関しても、最近は手軽に使えるクラウドで使える給与システムとか、社会保険の手続きがクラウドで簡単にできるとか、そういう新しいものがたくさん出てきています。
日本の中でも、この領域のスタートアップへの投資が増えているという状況です。
まとめてみると、HRテクノロジーは、今の全体観でいうと「人事の仕事の効率化をするもの」から、「課題解決を行うもの;人材、組織、そして会社経営の課題解決を行うもの」にどんどん進化しているというのが現状ではないかと思います。
そして、今後はますます課題解決型のものが発展していくだろうという風に思っています。

データの統合が人材開発に必要

人事には、実はたくさんいろんなデータがありますよね。
採用課、労務課、企画課、人材開発、組織開発、配属の現場であったりとか、スキルの習得であったり目標管理だったり、いろんなものがあります。
全てシステム化されているのか、それとも個々にエクセル表を作成してメールを転送して、サーバに入れたり出したりしているとか、どちらでしょうか。
一人の社員の方に関する情報は、とてもたくさんあります。
でも、それらがバラバラになっていて、統合されていない実態もあります。
例えば入社した時に、どういう評価をされた方が3年後、5年後、10年後にどんな仕事、どんな組織でやっているから、すごく成長したとか、それに関してどういう育成をやってきたのか、とか、そういうことが全然わからないのです。
採用の時のデータとその後の成長のデータも繋がってないし、人は同じ人なのに、データがそれぞれ時間軸も場所もバラバラになっている。
こんな状況のまま、日本は20年30年経ってしまいました。
それだと結局、なんにもできないのです。
さきほど清宮さんからビックデータの話があったのですが、要は大量のデータあるんだけど、個々に置いてあるだけなので、それでは何もできないわけです。
ということで、オラクルでは一つの大きなデータベースの中に、人の状況、組織の情報、会社における人のライフサイクルの全部を整理して格納するようなシステムを作っています。

オラクルの事例:事業変容と人材とその育成の変容

特にその中で人材開発に関わるのは、目標管理、評価、タレントレビュー、キャリア開発です。実際の事例として、弊社の話をしたいと思います。
オラクルは、もともとデータベースという大きなシステムを売っている会社なですが、ここ5、6年はクラウドのアプリケーションであるとか、クラウドのデータベースなどを販売するようになってきました。
ビジネスが、変化してきているのです。
それまでは長い時間をかけて何億円というシステムを売ってたんのですが、クラウドの時代は、短い期間でどんどんお客様に使っていただくという時代なので、販売の仕方も変わってきました。
それに合わせて、社員のマインドも変えていかなければいけない。市場で勝っていくためには、人のマインドとかスキルセットが重要なのですが、競合は、最初からクラウドのビジネスで始まっている会社が多いので、クラウドのマインドセットが最初からある。弊社の場合は、これを全社で全部変えていかなきゃいけないということになります。
人事はものすごく大変なのですが、それをやるために、こういったシステムを使っています。
人事は、最初にやったのは、コンピテンシーを変えることでした。
それまで31個あったコンピテンシーを7つに絞って、グローバルで14万人がその同じコンピテンシーを使って、自分の人材開発、部下の人材開発をしていくというように変えました。
そして、人事と現場は「人材の見える化」、バラバラにやるのではなく、個人個人のデータがきちんと一致した形で、見える化します。
そしてそれを使ってタレントレビューを行います。これが人材開発の肝となるんですけど、それをやって、育成の強化をしたり、後継者を決めたり、「こういう人をもっと採用しよう」というところに使ったり、組織課題に対応するというようなことをやっています。

コア・コンピテンシーとファンクショナルコンピテンシーの体系

現在、7つが弊社のコア・コンピテンシーになっています。
特徴があるのが、チェンジアジリティです。素早く行動する、素早く適応するということがそれまではなかったのですが、クラウドの時代なのでそういうものが入っています。
競合に打ち勝つ力では従来にもありましたが、インパクトが起こせるようなコミュニケーション、インスピレーショナルリーダーシップと言って周りを鼓舞するようなリーダーシップなど、7個が制定されています。
またファンクショナルコンピテンシーといって、例えばセールスであればセールスの機能として、部署によっては追加をして使っています。
コンピテンシーが体系になっていて、1、2、3、4、5の段階で自分で測り、上司がこれを評価するということを年間を通してやります。これが人材開発の基本になっています。
HRテックでは、目標管理もテーマです。
これも仕組みを使っています。立てた目標に対してどのぐらい進捗しているかを上司が見ることができるようなものです。
人事の方は、目標管理がどのぐらい進んでいるか、予定通り実施されているのかを、一つの画面で見られるようになっています。

人材開発に活用するデータを9ボックスで見える化


人材開発のところで、9ボックスというやり方をしています。
例えば、業績やコンピテンシーを上司と部下で話し合って、それを入力すると、結果として全体を統合した組織としてこのような図が表示されます。
今、縦軸と横軸には会社によって重点にするものを入れるのですが、弊社の場合は横軸に業績の評価を、縦軸に潜在力評価をとっています。
潜在力評価は、4つの質問項目があり、上司が部下についてその質問項目に従ってレベル感を入力すると、図に表示されるのです。
9ボックスは、一番上のところがトップタレント、業績も良くて、伸びもある方になるので、こういう方を「後任にしましょう」とか、「選抜教育を受けさせましょう」とかということになります。
「あまり業績ができていなくて、やる気が足りないな」という方は、もしかしたら仕事が合ってないということもあるので、異動を考えるとか、なんらかの対策をとっていくというようなことです。
弊社の場合は、これを社長が役員をやり、役員がその下の層の人をやり、部長が下の課をやりというのをやっていくので、全員の人がどこかに入る。必ず階層別に見て行って、例えば、一番下のレイヤーぐらいですと、隣の部などよく仕事上関係する部の部長さんが何人か集まって、自分の部と、他の人の部を一緒に見ていくということをやります。
これをやることによって、管理職の方々の偏りみたいなものをなくしていくのです。例えばある人が部長だとして、下にについて自分が見ているのと他の人が見ているのとでは結構評価が違ったりします。
そういうようなことをしたり、「うちの部ではこんな風にしてこういうレイヤーの人たちを育成してるよ」「だったらうちの人もそういう風にしたらいいかな」という風に、評価付けをするというより、どう育成していくかという観点で育成のメニューを立てるための9ボックスなんです。
逆に言うとよく日本の会社では、業績を付けるのにこれを使ったりすることが多いのですけども、弊社では業績そのものは上司と部下とであっさり決めています。
弊社の場合は、その業績とこれからの伸びしろ情報を使って、どういう人をどういう風に育てていくかということを議論するというのが、タレントレビューになります。
これが人財育成の基本です。

AIが人材育成を促進する

HRテックというと、みなさん気になるのがAIだと思うので、どんなAIがあるのを簡単にお話ししたいと思います。
まず能力開発では、不足している能力を高める研修をおすすめしてくれるものがあります。
研修は動画を使ったものが最近多いですね。
例えば今、私を撮ってくれていますが、こういう話も動画で撮ってアップしておくと、参加できなかった人はあとで携帯で見ればいいのです。こんな風にして人材育成をすごく効率よくやることができます。
あとはSNSですね。
これも社内SNSを作ることによって整合性を高めていくのがミレニアル世代と言われますけど、携帯がなかったら生きていけないような人たちは、学習も携帯でやる時代になっていると思います。
実はAIは使い勝手を良くするのも得意で、「あなたはいつもこういうものを見ているから、この項目を一番上にしときますよ」とAIが画面をおすすめしてくれたりとか、職務内容やポジションによって「こういう仕事を先にやってくださいね」みたいなリストを作ってくれたり。採用では、すでに実用化されていてアメリカではよく使われています。募集すると、何百人、何千人ものレジュメがくる企業では、そのレジュメをAIが読み取ってくれて、この人が一番マッチ率が高い、というのを出してくれます。
採用に関するAIは最も進化しています。
さらに、アメリカでは「給料をあとどのくらい上げると、この人の入社確率があと何パーセント高まります」みたいな、そんなところまでやれるようになっています。

AIが出す、退職リスクからの打ち手

これも理想事ではなく実現に始まっています。
そのほか特に退職リスクは取り込まれてきます。
ビッグデータといえば、集めたデータをどうやって分析するかとも、データを貯めていくことによっていろんな分析結果を見てくことができます。
会社によっては従業員が今日現在何人か、わからなかったりします。
あとはダイバーシティ。障害者、女性の比率を見ます。
また採用するのにどのぐらい時間がかかっているかなど、いろんなものを見ていって、どこが何が悪いのかがすぐにわかる。
面白かったのが、ボーナスとパフォーマンスの関係。
パフォーマンスが高いのにボーナスが低いと、退職しがちですよね。そういう人たちに気を付けていきましょう、とか。例えばここをクリックすると、この人たちはどこの誰誰とリストで出てきて、一人ずつまたそこ見ていくと、個人データが出てくる。
ですからすぐに打ち手がとれるというのが、ビッグデータ人材のデータを分析するメリットです。
重要なのは、時間です。
何かをやりたいときにこれらのデータがバラバラだと、すぐに対策がとれない。経営トップは、今すぐにこうしたデータを見たいのです。

経営をよくするサイクルを回すHRテック

人事部の方が、エクセルで一生懸命集計して、分析してということも、できるんですけど、時間がかかる、手間もかかる。人がやるのでミスが起きる。
こういうことを、無くしていく。
それによって、経営が良くなる、人が成長することで、よりよい経営ができるというのが目指しているところだと思います。
オラクルの場合は、今言ったような人事のデータだけではなくて、財務、購買、お客さまのデータ、セールスのデータも、実は大きな一つのデータベースに格納されています。
例えば購買が使い、ファイナンス・会計が使い、人事が使い、営業が使うと、これらのデータ全部を分析できるようになります。もともと1つの大きなデータベースの上にシステムが構築されているからです。
経営ダッシュボードでは、お客様のデータ、物流のデータ、会計、人事のデータがある・。経営者が本当に見たいものはこれなんです。
ただ、今までシステムが無かった。なので、こういうことが実現できなかった。やっと技術が追い付いてきて、みなさんが欲しいなというものができた、これがテクノロジーの発展なのです。

採用がホット。採用できない場合はマイクロラーニングが重要

採用がどこの国でもものすごくホットですね。
日本はもうみなさんご存じの通り、人口が減少していて、圧倒的に数が少ないこともありますし、欲しい人材が採用できない。今、ADC人材と言って、A=AI、D=ビッグデータ、C=クラウド、このADCはものすごくニーズが高いです。
ところが、簡単には採用できない。さらにADCだったら、ADCだけできればいいかというと、実はそうではなくて、企業が期待しているのは、そういう人であればあるほど、リーダーシップやコミュニケーション力をつけてほしい。
要はそんな人はいないので、会社としては。会社の中で、不足の部分は育成をしていくことが重要です。
そのためには、人を集めてみんなをいっぺんに研修する階層別研修では全然追いつかないので、マイクロラーニングを使ってやっていく。
だけど、人間と人間でやるところは人間と人間でやらないと効果がでないので、人材開発する人がより多くの時間を作っていくことが必要なのです。
現場で人と人とのコミュケーションをとる時間をつくるのが、テクノロジーを使ってさらに仕事を進めることの意味だと思います。

丸島 美奈子
◆HRテクノロジーコンソーシアム 理事
日本オラクル株式会社
 クラウド・アプリケーション事業統括 
 事業開発本部ビジネス企画・推進部 HCM

人材・組織コンサルティング、タレントマネジメントシステムの開発・営業支援・マーケティング、Web人事コミュニティ・メディア編集を経て現職。
日本オラクルでは、企業の生産性向上に貢献する“Oracle Human Capital Management(HCM)Cloud”の事業開発を担当。
日本アクションラーニング協会認定シニアALコーチ、(国家資格)キャリアコンサルタント、SSUG(スキル標準ユーザー協会)認定コンサルタント。
著書『優良企業の人事プロに選ばれる人事支援サービス100選』。